KENT「心が踊ってる」(No.004)

Dance

今もダンスに情熱を持ち、活動を続けるダンサーが、なぜダンスを始めて、今までどんな道を歩んできたのか。そんなシンプルかつ興味深い質問をぶつけるべく、挑戦し続けるポッパーKENTに、ダンスを始めたきっかけや今までの道のり、そしてその気持ちの源をお聞きしてきました。

取材日:2022年8月21日

最初は興味なかった

Ume:さて、今日はじっくりお話し聞かせていただきます!KENTのダンスのきっかけを聞いていきたいと思いますが、中学の頃に何かきっかけはあった?

梅田 賢人(うめだ・けんと)
ダンサーネーム:KENT
1989年、福岡県生まれ。やわらかな第一印象を持ちながら、踊り出せば正確無比なPoppingとファンキーなBoogalooで見るものを魅了するPoppingダンサー。分析と思考を繰り返し、ダンスのみならず自分自身を磨くことを継続する人間性に尊敬の念を抱かずにいられない。
なんだしでおなじみの素材の会社でエンジニアとして新たな素材を世に出すことに貢献している。

KENT:中学の時は野球してました。ダンスはまだ出てこないっす。

Ume:じゃ、高校かな?

KENT:高校でもまだダンスしてないです(笑)

Ume:じゃ、野球だ。

KENT:いえ、ハンドボールです(笑)中学の時に野球やってたんですけど、これを続けることにビジョンが描けなかったので、高校から始めても活躍できるハンドボールをすることにしました。3年の時はキャプテンやりました。

Ume:ビジョン。。。さすがですね。その時から戦略持って行動してんだ。すごいな。

KENT:でも、高校の時にダンスの存在は知ってたんです。友達がバレー部やめてダンスやるって言ってて、その時誘われたんですけど、ハンドボール部のキャプテンをすることが決まってたんで断りました。でも、その友達から色々教えてもらって、スーパーチャンプルー見てましたよ。そんなに覚えてないですけど(笑)

Ume:(意外、ダンス熱が上がってこない。)そそ、それじゃ大学で始めたの?

KENT:そうですね。自分はハンドボールも好きだったし、バスケも好きだったんです。だからダンスを含め3つのサークル掛け持ちしてました。新歓イベントでダンスを踊ってるの見たんですけど

「こんな感じなんやなー」って感想でした。

Ume:まだ熱が上がらない。。。

KENT:何か打ち込むものがほしかったんですよ。ダンスサークルで友達ができたこともあって、練習にいくようになるんですけど、まだ、はまったって感じはなかったですね。

Ume:おぉぉ。

KENT:1年目の夏にダンスサークルのイベントにロックチームで出ることにしました。でも、その夏休みの里帰り中にハンドボールのOB戦で足を骨折してしまうんです。

それが原因で夏のイベントにも出れませんでしたし、2ヶ月の治療の間ダンスサークルにも行けませんでした。僕のロックはここで終わります。

Ume:え、ダンス離れるってこと!?

KENT:まぁダンスにハマってたわけでもないので、離れますよね。

Ume:それで?

KENT:足が治って動けるようになって、もう一度ダンスサークルに行くようになったんですけど、4年生にサークル歴史上アツいPoppingの3人組がいて、サークルの飲み会の時に、自分たちの代で作り上げたPoppinシーンを下の代に引き継ぐために、Poppingのチームをプロデュースするという話をしてたんです。

この時「これは打ち込めるものだ」って確信して、そのチームのメンバーに立候補しました。
Popping経験なし状態でしたけど。

Ume:KENTの心に火がついたー!

KENT:正直、ダンス経験はほとんどなかったので、Poppingは難しかったです。でも、がんばればだんだん出来てくる実感がありました。そのあたりが自分に合ってたんだと思います。

サークル内で定期的にバトル練習をしていて、1年生もガンガン出させるんですよ。

勝った時は評価されてうれしいかったですね。

そんなこんなでどんどんはまっていきました。

九州の大学1年生限定のコンテストにそのプロデュースされたPoppingのチームで出場したんですけど、同じサークルのロックチームは入賞してたのに、自分たちは入賞できなかったんです。

めちゃめちゃ悔しかったですね。

そこからですかね。負けず嫌いの心に火がついて、次のコンテストの機会があったら絶対優勝してやるって気持ちになって、基本的に毎日練習するようになりました。そのころからスタジオにも通うようになりました。

熊本の大学に通ってたんですけど、福岡のカーニバルっていうイベントに下道で片道3時間かけて行ってましたね。深夜イベントだったんで帰るのは朝方で、帰りはフラッフラで運転してました(笑)

4年の時に予選を上がることができた時、本当に嬉しかったことよくお覚えてます。また、学生最後のカーニバルに出場した時に予選を上がれなかったことが、今までで一番悔しい思い出です。

Ume:火がついてからはすごい燃え方してるね。

KENT:めちゃめちゃ楽しかったですね。ダンスが好きになってたってのももちろんですが、周りの人が好きでした。先輩も後輩も仲間も。そのつながりがたまたまダンスだったって感じです。

卒業するまでしっかりダンスしてました(笑)

大学時代のコンテスト入賞作品
[Column:KITEさんのBoogaloo styleに憧れて]
良いと思ったものは取り入れて、混ぜ、自分のスタイルにしていく。たくさんのダンサーに影響を受けたKENT氏。
大学の先輩。熊本のP→☆さん、GORIさん。オリジネーターならSkeeter Rabit、Mr.Wiggles。日本のOGならYUKIさん、ACKYさん。とあげればキリがないほど。オリジネーターから日本のトップPopperまで、誰が撮ったかわからないDVDを何回見たかわからないくらい見たとのこと。

しかし、その中でも強いて一人の影響を受けたダンサーをあげるなら、KITEさん。
大学時代、熊本にはなかったKITEさんのBoogaloo styleを福岡で初めて直接見て、衝撃を受け、思わず叫んでしまったそうな。社会人になってからはKITEさんのレッスンにも通った時期があったとのこと。
KITEさんの代名詞ともなっている、神速のBoogalooはKENT氏のダンススタイルに大きな影響を与え、KENT氏も同じくBoogaloo styleを得意としている。

作戦の立て直し

Ume:大学時代をダンスで駆け抜けて。卒業してからはどんな感じだったの?

KENT:そうですね。熊本のダンス仲間、先輩や友達が好きで、熊本で一生を終えたいって思って、熊本に残ることを軸に就職活動していました。

Ume:熊本愛だ。

KENT:実際に狙い通りに就職できて、入社直後は東京出向という形でしばらく東京で仕事することになるんですけど、東京でカルチャーショックを受けることになるんです。。。

大学の先輩の紹介で社会人ポップサークルでお世話になることになるんですけど、そこに来る人がめちゃくちゃレベル高くて、しかも一度は聞いたことがあるような有名企業の方がたくさんいて。。。

熊本に残ろうとしていたこと、ダンスに対する考え方、仕事に対する考え方、全てにカルチャーショックを受けました。。

そこで、まず仕事環境を変えようと思って転職することを決めたんです。

でも新卒で数ヶ月、どこも拾ってくれる会社なんてないですよね。

そこで、作戦を立て直すことにしました。

Ume:人生の転換点だ。

KENT:そうっすね。でもそれでダンスはお休みしようって思ってたんですけど、縁あって社会人ダンスサークルDDDに出会うんです。

行きつけのバーがあって、そこでダンスやっている人を紹介してくれたんですけど、その人がたまたまDDDの人だったんです。

DDDは何というか、その時の自分にとってとても居やすい環境だったんです。

その時出会った仲間は今でも大切な仲間です。

Ume:そうだったんだね。それでダンスを続けることができたんだね。それからどうなったの?

KENT:社会人3年目で長崎に1年間転勤になるんです。その期間はダンスは本当にお休みして、資格の勉強に打ち込みました。朝と夜、資格の勉強をする日々が半年くらい続きました。

1年が経った時、無事資格も取れました。そして異動の話になるのですが、東京に戻ることを強く希望して、東京に戻ってくることになります。

その後、DDDでのダンスを再開しましたし、今の会社に転職することができました。

[Column:ダンスとデータ解析のコラボレーション]
KENT氏はデータ解析を仕事としており、ダンスとデータ解析を掛け合わせることを考えたことがあるらしい。ZOZOスーツみたいに全身にセンサーを取り付け、位置情報、加速度、などの情報から、ダンスの上手な人と比較し、上達のポイントを的確に導き出す。
そんなダンスのAI先生。
彼のアイディアが実現したら、今のスーパーダンサーたちの技術が、ダンスという無形の芸術がデータという有形でアーカイブされる時代が来るかもしれない。

心が踊る

Ume:ダンスに燃えて、カルチャーショックから、またダンスに踏み出す。何がKENTの原動力になっているの?

KENT:友達がいるからってのが大きいかもしれないですね。

一緒にショーケースしたり、一緒にバトルに出たり、多分友達がいなかったらこんなに続けてこれなかったと思いますし、一緒に踊るのが好きなんですよ。

あと、悔しい思い出ですね。

昔バトルで負けた悔しい気持ちが今も心に残っていますね。最近それが再燃してきて、毎週レッスン通って自主練を継続しています。

てか、今気づきましたけど、昔と変わってないのかも知れません。笑

Ume:大事にしていることってはの変わらない、それがKENTらしさなのかも知れないね。

KENT:変化していることもあると思います。例えば、フィーリング面でダンス以外のいろんな経験が自分の中に蓄積されていて、今は昔とは違ったダンスが出来そうな感じなんです。今まで積み上げたダンスの経験の山があって、その山の下にいろんな経験が地盤となってその山をもっと高くしているイメージです。

ダンススキル面だと、昔は周りのダンサーとは異なる魅力を求めてBoogaloo style一つを突き詰めようとしてきましたけど、限界を感じることがありました。でも今はBoogaloo以外のことを練習することで、その限界を乗り越えるきっかけを発見して、さらに自分のBoogaloo styleを成長させることができる。ってことに、意外なことですがダンス以外のところで気づいて実践しています。

Ume:じゃ、これからのKENTのダンスライフはどうなっていくかな?

KENT:ライフステージによって、ステージに出る、出れない、ということはあると思いますけど、自分の中で、ダンスはすでに自分の生活の一部になっています。

家の中で歩いてる時に手がリズムとってるらしいです。笑

Ume:スーパーチャンプルーを見た時の少年KENTは手が踊ってないでしょ。笑

KENT:手が踊ってなけりゃ、心も踊ってないですよ。

Ume:心が踊ってる??かっこいい。(その言葉いただきます)

KENT:どうぞ使ってください(笑)

打ち込むものとして選んだダンスと、そのダンスで出会うことができた大切な仲間。

そんな仲間と一生踊り続けていければ、幸せな人生になると思います。

ダンスサークルDDDで出会ったきいちくんとのユニット
[Column:多趣味なKENT]
Ume:緊張するとか言っときながらも、たくさん話してくれてありがとう。はい、ここからはオフトークです。KENTのダンス以外のリラックス時間の過ごし方を教えてください。

KENT:ほぼ毎日飲んでます。

Ume:どのお酒?

KENT:ビールですね。なんかビールが合ってるんですよ。毎日ですけど、うめぇと思って飲んでます。ちなみに発泡酒でもいいんですけどね。

Ume:発泡酒でもいいんかいっ。

KENT:あと、これからの仕事で必要になる英語の勉強してます。
社内公募の面談の時、英語は話せません、って言ったら面接官が曇り顔になったんですけど、台湾で中国語覚えてきました!だから大丈夫です!って言っちゃってるんで、毎日勉強してまっす。

Ume:勉強家!

KENT:あとは料理ですね。最近は奥さんが出社してて、自分がリモートが多いので、Youtubeを参考に料理してます。というか再現ですね。

Youtuberです。料理系、釣り系、ラーメン系、旅系、etc。。めちゃくちゃ見てます。

Ume:めちゃみてるやん。。。

KENT:料理は毎日してますし、ラーメンは毎週食べに行ってます。

あ、冬はスノボ行きますし、最近ゴルフも始めました。

Ume:もうええわ!笑
編集後記:
今回のチャレンジは、KENTのダンスの歴史を本当に何も知らなかったこと。でも不思議と記事にできる自信はあった。それは彼の言う通り、ダンスそのものが自己紹介になってるのである。
もしかしたら語る必要もなく、これもまた彼の言葉通り、心で踊り心で感じるものなのだと、改めて再認識できた。
ダンスは踊ればそれで十分であることと、記事に残すことは一見矛盾しているかも知れない。
しかし、文字になる良さは必ずあって、時にはダンスの感性の助けになるものであると信じている。そんな気持ちを胸にこれからもダンサーの取材を続け、彼らの生き様を文字に残そうと心に誓ったのである。
またまた、最後になりますが、CanCam氏、ダンサーの魅力を引き出す撮影、ありがとうございました。
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